※《オデュッセウスとセイレーン》《夢魔》《そして妖精たちは服を持って逃げた》《殺人》《ドルバダーン城》《メデューズ号の筏(テオドール・ジェリコー作品の模写)》の作品をクリックすると、中野京子氏による作品解説をご覧いただけます。

 ギリシャ・ローマ神話や聖書で語られる物語は、必ずしも幸福なものばかりではなく、人間に苦難を強いたり、悲劇的な結末を迎えるものも少なくない。というのも、神話や宗教は、本質的に人間には抗うことのできない超越的な力や摂理を抽出するものだからである。本章では、神の意志や気まぐれに翻弄される人間の悲喜劇を描いた絵画を紹介する。
《 オデュッセウスとセイレーン 》
ハーバート・ジェイムズ・ドレイパー 1909年 油彩・カンヴァス リーズ美術館蔵
©︎ Leeds Museums and Galleries (Leeds Art Gallery) U.K. / Bridgeman Images

左《 オデュッセウスに杯を差し出すキルケー 》
ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス 1891年 油彩・カンヴァス オールダム美術館蔵 © Image courtesy of Gallery Oldham
中《 ソロモンの判決 》
ジャン・ラウー 1710年 油彩・カンヴァス ファーブル美術館蔵
 © Musée Fabre de Montpellier Méditerranée Métropole, France
 ‐Photographie Frédéric Jaulmes ‐ Reproduction interdite sans autorisation
右《 スザンナと長老たち 》
フランソワ=グザヴィエ·ファーブル 1791年 油彩・カンヴァス ファーブル美術館蔵
 © Musée Fabre de Montpellier Méditerranée Métropole, France
 ‐Photographie Frédéric Jaulmes ‐ Reproduction interdite sans autorisation
 ヨーロッパのキリスト教世界では、人間を堕落させ悪の道へと誘う者として悪魔という存在が長きに亘って想像されてきた。また、人間が生前犯した罪の報いを受ける死後の世界として、地獄のイメージが伝統的に培われてきた。本章では、近代にまで命脈を保った悪魔や地獄のイメージや、それに近接する怪物の主題を描いた作品を取り上げる。
《 夢魔 》
ヘンリー・フューズリ 1800-10年頃 油彩・カンヴァス ヴァッサー大学、フランシス・リーマン・ロブ・アート・センター
© Frances Lehman Loeb Art Center, Vassar College, Poughkeepsie, New York, Purchase, 1966.1

左《 聖アントニウスの誘惑 》
アンリ・ファンタン=ラトゥール 1897年 油彩・カンヴァス プチ・パレ美術館蔵 © RMN-Grand Palais / Agence Bulloz / distributed by AMF
右 ワイルド『サロメ』より《 踊り手の褒美 》
オーブリー・ビアズリー 1894年(1906年 出版) ラインブロック・紙 個人蔵
 人は、自らの日常生活の外にそれとは違う論理に支配された異界というべき空間を想像してきた。また、とりわけロマン主義以降の美術では、異界が時として日常生活の狭間や我々自身の内面に発生する様子を幻視するかのような作品が数多く生み出された。本章では、我々の住む世界の自明性を脅かすさまざまな異界の表現を紹介する。
《 そして妖精たちは服を持って逃げた 》
チャールズ・シムズ 1918-19年頃 油彩・カンヴァス リーズ美術館蔵
©︎ Leeds Museums and Galleries (Leeds Art Gallery) U.K. / Bridgeman Images

左《 老人と死 》
ジョセフ・ライト 1775年頃 油彩・カンヴァス リバプール国立美術館蔵 © Courtesy National Museums Liverpool, Walker Art Gallery
中『妄(ロス・ディスパラテス)』より《 (4)大馬鹿者 》
フランシスコ・デ・ゴヤ 1815-24年 エッチング・紙 姫路市立美術館蔵
右『エドガー・ポーに』より《 (3)仮面は弔いの鐘を鳴らす 》
オディロン・ルドン 1882年 リトグラフ・紙 岐阜県美術館蔵
 人間が生きる現実は、様々な恐怖と苦悩に満ち満ちている。なかでも最大にして最も普遍的な恐怖は死である。死は、それに近接する老いや病気、あるいは犯罪や戦争などの死を発生させる事象とともに、画家たちにとって重要な主題であった。また現実の世界には、一見無害に見える社会的な習俗にも様々な悪弊や不条理が潜んでいる。本章では、死の場面を中心に、現実の中に存在するいくつもの闇を描いた絵画に焦点を当てる。
《 殺人 》
ポール・セザンヌ 1867年頃 油彩・カンヴァス リバプール国立美術館蔵 © Courtesy National Museums Liverpool, Walker Art Gallery

左『ビール街とジン横丁』より《 ジン横丁 》
ウィリアム・ホガース 1750-51年 エッチング、エングレーヴィング・紙 郡山市立美術館蔵 © Koriyama City Museum of Art
中左《 発見された溺死者 》
ジョージ・フレデリック・ワッツ 1848年頃 油彩・カンヴァス リバプール国立美術館蔵
 © Courtesy National Museums Liverpool, Walker Art Gallery
中右《 不幸な家族(自殺) 》
オクターヴ・タサエール 1852年 油彩・カンヴァス ファーブル美術館蔵
 © Musée Fabre de Montpellier Méditerranée Métropole, France
 ‐Photographie Frédéric Jaulmes ‐ Reproduction interdite sans autorisation
左《 切り裂きジャックの寝室 》
ウォルター・リチャード・シッカート 1906-07年 油彩・カンヴァス マンチェスター美術館蔵
 © Manchester Art Gallery / Bridgeman Images
 18世紀から19世紀にかけてのロマン主義時代、風景画は新たな発展を遂げることとなった。歴史画の背景として発達した理想的風景や特定の場所のありのままの姿を描写する地誌的風景に加え、なんらかの感情や気分を暗示的に表現する主情的・主観的な風景画が生み出されたのである。本章では、「崇高」の美学を反映した作例を取り上げ、その背後に隠された不安や恐怖の感情を読み解く。
《 ドルバダーン城 》
ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー
1800年 油彩・カンヴァス ロイヤル・アカデミー蔵
© Royal Academy of Arts, London; Photographer: Prudence Cuming Associates Limited

左《 ポンペイ最後の日 》
フレデリック=アンリ・ショパン 1834-1850年 油彩・カンヴァス プチ・パレ美術館蔵
 © RMN-Grand Palais / Agence Bulloz / distributed by AMF
中《 ソドムの天使 》
ギュスターヴ・モロー 1885年頃 油彩・カンヴァス ギュスターヴ・モロー美術館蔵
 © RMN-Grand Palais / René-Gabriel Ojéda / distributed by AMF
右《 森へ 》
エドヴァルド・ムンク 1897年 木版・紙 姫路市立美術館蔵
 人間の歴史は、激しい権力闘争の歴史でもある。ヨーロッパにおいてもそれは例外ではなく、一度は栄華を誇った者であっても、ひとたび争いに敗れてしまえば無慈悲な運命が待ち受けていた。本章では、歴史を彩る悲劇的なエピソードや運命に翻弄された人々の姿を描いた作品を特集する。
《 メデューズ号の筏(テオドール・ジェリコー作品の模写) 》
ジャック=エドゥアール・ジャビオ
1854年 油彩・カンヴァス ボルドー美術館蔵 © Musée des Beaux-Arts, Ville de Bordeaux. Photo L. Gauthier

左《 クレオパトラの死 》
ゲルマン・フォン・ボーン 1841年 油彩・カンヴァス ナント美術館蔵 © RMN-Grand Palais / Gérard Blot / distributed by AMF
中《 チャールズ1世の幸福だった日々 》
フレデリック・グッドール 1853年頃 油彩・カンヴァス ベリー美術館蔵 © Bury Art Museum & Sculpture Centre, Greater Manchester, UK
右《 マリー=アントワネットの肖像 》
作者不詳(フランス派) 18世紀 油彩・銅板 ボルドー美術館蔵 © Musée des Beaux-Arts, Mairie de Bordeaux. Photo F. Deval

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